視点
青水無月の到来を祝福するかのように細く力強く降り注ぐ雨は、私の身体に軽快なリズムを刻み始めた。まるで、覚えたてのステップを誇らしげに踏むタップダンサーのように。
僕たちは会話を続けた。
「僕は時々、色について考えることがあるんだ。特に白が好きだ。」
「どうしてそう思うんだい?」
「そこには何でも描けるキャンバスが広がっていて、白ければ、白いほど、僕の理想に近づきそこに面白味が出てくる。」
「ただ、白さを求めれば求めるほど白から遠くなる。」
「完璧な白は存在しない、完璧な人間が存在しないように」
「では、どうすればいいんだい。」
「白に価値を持たせるんではなく、その周りの色に意味を持たせることが大事なんだ。」
「言うならば、190cmの大男の横に御牧を置いたら、さらに大きく見えてしまう感じに似ている。」
僕は漆黒の闇中にぽつりとまるで梅雨明けの蛍のような光で灯されたレストランピアノを目指して本当の白さ求め、歩き出した。
担当 御牧