国立へ
担当:大重正人
石崎監督が先日のミーティングで言っていました。
「J1昇格を決めた湘南戦、あの時は不思議と涙が出なかった。でも天皇杯を優勝して日本一になったら、涙が出るかも知れない。年をとって感情的じゃなくなったのかもしれないけどね」。
なぜ涙が出なかったのか。それは当時、石さんのなかで昇格することが使命で、不可能に近い夢を叶えたわけでもなく、自分のやるべき仕事を当たり前に全うしたにすぎない。もっと先へ向けてやるべきことがたくさんある。そんな思いがあったのかなと勝手に想像してみました。
今日の勝利は、言葉にしがたい格別の逆転勝利でした。声がかれるほど応援して、ピンチには心臓が止まりそうになって、ゴールには全身で喜びを爆発させて、涙を流すほど感動した人もたくさんいるでしょう。
ただ、今日は試合が始まって、鈴木達也選手のすばらしいミドルシュートが決まったとしても、絶対に勝てる、勝つという確信めいた気持ちが私の中にありました。いまのレイソルはそれほどに団結していて、優勝へ向けて断固たる決意がある。今日の選手たちが、負けるわけがない。だから、まだ涙は出ません。まぐれじゃなく、勝つべくして勝ったんだと私は思っています。でも、決して冷静ではなかったです。記者席で報道陣が冷静に試合を見ている中、後半の2ゴールにひとり叫び声を上げてしまったのも事実。あとで記者さんに少し冷やかされました。。。
「イワオ、あと2日でしっかり治せよ」
「ムリムリ。今日は限界を超えたよ」
試合後のロッカー、天皇杯のもう1試合の行方を見ていた輪から外に出てきた師弟からこんな軽口も聞かれました。まだ100%万全ではなかった山根選手、それでも90分フル出場を果たし、大きな勝利をつかんだからこそ、笑いを呼びながら機知に富んだ話をしてくれました。「先制されたけど大丈夫だと思っていた。後半からフランサが入るのは、勝利の方程式だね。前半からみんな全力で飛ばして、相手が疲れたところにフランサが入る。今日もマジックが出たね?。ボールが落ちつくし、後ろの選手は休める。」さらに「決勝は来年、来年のことはまだわからないよ。今年は勝って終われた(笑)、オレたちは『ノリ』で来てるから」。
『ノリ』といえば、決勝ゴールをぶち込んだ李忠成選手もヒーローインタビューでそんな一節を口にしていました。ゴールを決めて真先にベンチへ猛ダッシュ、ロックオフされたのは石さん。しかし石さんは笑いながら猛ダッシュで逃げていました。その顛末が記者会見でも話題になり「ジンクスだよ」と答えたそうです。記者さんにジンクスって何?と聞かれ即答できず、あとで監督に聞いてみようとしましたが他の対応でゆっくり話を聞けず。そうしたら前広報の横井さんが教えてくれました。
「大分の頃からゴールを決めた選手に触れると、そのあとにピンチが来る」
06年のヴェルディ戦、セットプレーのクリアをフランサ選手がスーパーボレーで叩き込んだ名シーン。飛行機ポーズでベンチにやってきたフランサと、思わず握手してしまい、そあとに1点取られてしまった。だから、石さんはジンクスを思い出して一目散に逃げたのでしょう。チュンソン選手からは「羽交い絞め」宣言が出ていますが、それは元日にとっておきましょう!
いろいろ話がそれましたが、いつもと変わらぬ守備でゴールを守り抜いた菅野&古賀選手、カボレ選手を自由にさせなかった祐三選手の奮闘、いきなりの出番にもケガ明けからしっかりと努力を準備を続けてきた成果を見せてくれた石川選手、大学時代から鎬を削ってきた長友選手と真っ向勝負を繰り広げた村上選手、太田&ポポ選手の献身的なランニングが相手のスタミナを奪い、杉山選手の分まで栗澤&アレックス選手がゲームをコントロール。最後にゲームを絞めた藏川選手、ベンチに入った4選手、そしてメンバーから外れた大谷キャプテン。いつもはアウェイには来られないフロントやレイソルを支えていただいているスタッフの姿もありました。
そして何よりサポーターの数と声援。選手がアップに登場して早々、レッツゴーカシワの大合唱。あの応援が勝利のイメージを植え付け、選手を勇気づけたことでしょう。ついに決勝まで昇りつめました。これは、夢じゃありません。みんなが力のすべてを出し切って、自分たちで掴みとった現実。天皇杯のファイナリストです。
今日は来られなかった皆さんも、元旦の国立には一緒に戦えます。相手のガンバは、もちろん相手にとって不足なし。くどいですが、国立に行くことが目標ではありません。国立で勝つこと。チュンソン選手の言うように「胸に赤い星をもうひとつ!」
最後にご連絡です。明日30日、31日の練習は告知通り9時半から、もちろん見学も可能です。また天皇杯決勝の結果にかかわらず、31日が日立台での最後の練習になります。昨年同様にミニゲームを公開、そして今季でチームを離れる石崎監督、ロビンソンコーチ、アレックス選手にとっては最後の日立台になります。しみじみじゃなく、最後まで笑って。それが石崎監督の望みですから。多くのご来場をお待ちしています。