川崎戦
担当:大重正人
今日が、まるでシーズン最後の試合のように感じたほどでした。持てる体力、気持ち、すべてをこのピッチで出し切る。明日のこと、次の試合のことは考えず、とにかく死力を尽くしてやりきる。選手たちの鬼気迫る戦いぶりでした。と同時に、現状のレイソルはそれほどに追い込まれていました。
対する川崎には、この天皇杯だけでなく、カップ戦、リーグ戦にもタイトル獲得のチャンスがある中で、先発を大きく入れ替えてきました。一方、レイソルには選択肢がありません。とにかくこの試合にすべてを出す。そうしないとタイトルもACL出場権も得られない。今日は、この試合に懸ける選手の思い、送り出したスタッフの思い、サポーターの思いで、川崎に絶対負けまいと挑んだからこそ、大きな大きな勝利を得られたと思います。
先日土曜日の大宮戦でアディショナルタイムで失点を喫しました。「どうしても勝ちたいという思いの中で、ノーリスクのプレーを選んでいた。ボールを簡単に蹴ってしまっていた」。リードを守ろうとして、自分たち本来のサッカーを放棄してしまったことを下平監督は悔やみ「今日は仮にリードしたとしても、意地でもつなげ!」と選手たちを送り出していました。それは大宮戦の反省を受けてのことで、自信を持って自分たちのスタイルを貫くことを説き、そしてそのトレーニングや話し合いをこの3日間で積んできました。
「キーパーからのビルドアップ、センターバックやアンカーのポジショニングを含めて、もう一度しっかり準備した」。GK中村航輔選手から始まる攻撃で、中谷・中山のCBコンビのポジショニング、その前方中央に小林選手が構えていました。自陣ゴール前の危険なエリアにも関わらず、安易にボールを蹴りだすことをせず、徹底的にビルドアップを狙い続けました。もちろんその技術戦術が何よりですが、それと同時に強い気持ちがなくては成功しなかったでしょう。ビビらず、慌てず、強気に、徹底的にやり抜く。意地でもつなぐ。この4人は、本当に勇敢でした。
彼らの勇気を周りがつなぎました。サイドバックの小池選手や輪湖選手、中盤のキムボギョン選手と中川選手がパスコースを作り、絶妙にサポート。それを3トップ気味に構える、伊東、クリス、ハモンへとつなぎ、効果的な攻撃を繰り返しました。それは守備でも同様で「ヒロトがいれば、前から行ける」という中谷選手の言葉通り、前から前から相手に激しいプレッシャーを与えていました。中川選手のチェイシングが相手GKのキックミスを誘ったのは、1回や2回ではありませんでした。それでも相手は巧みで、自陣までボールを運ばれることもありましたが、ガシガシ当たりに行って、転倒してもすぐに立ち上がって、何度も何度も泥臭い守備を続けていました。クリスのスーパーゴールで得たリードを守ろうとせず、攻撃でも守備でも攻める姿勢を忘れませんでした。そして90分間、この強度を保ち続けられたのは、栗澤選手、細貝選手というベテラン選手の働きも大きいものでした。
ただ、今日の勝利で喜んでばかりいられません。来たる日曜、今度はリーグ戦です。少なくとも3位以内のACL出場権を得るためには、この時期に4試合未勝利となれば致命的です。前半のクリスの決定機、1-0となってからの伊東選手のビッグチャンスなど、違うスコアに持って行けた可能性も十分ありました。後方のビルドアップや踏ん張りを助けられるのは、何より前線の得点です。そして、川崎は中村憲剛選手、小林悠選手を温存しています。相手の対策をさらに上回る準備が必要です。チケット完売というサポーターの皆さんに応える勝利を、今度はホーム日立台で。今日にとどまらず、この一勝をまた次の一勝にしなければなりません。