天皇杯筑波大学戦
担当:大重正人
カップ戦予選、カテゴリーの異なる相手との対戦。何度経験しても、簡単に終わる試合はありません。筑波大学のキックオフからタイムアップまでの戦いや走り、そして試合後のあいさつ。スタンドからの大きな拍手が贈られるにふさわしいグッドチームでした。
だからこそ、レイソルは中2日でしたが、代表に参加中の選手、そしてサヴィオ選手以外は日曜の清水戦と同じ先発メンバーをネルシーニョ監督が選びました。「今季我々はこの天皇杯という大会が非常に重要な位置付けになると捉えていた。それはシーズンが始まった時点で我々のプランとしてあったので、今季リーグ戦で継続して戦ってくれているメンバーは連戦が続き疲労も相当懸念されたが、彼らとの対話の中で『今日のゲームに行くだけの準備、コンディションのある選手については、勝ちに行くのでしっかりと準備してほしい』と話した上でこの試合に備えてきた」と勝利にこだわる姿勢を貫きました。
前半はなかなか敵陣深くまで攻め入る機会が作れず、また筑波大学の巧みなパスワークを待ち構える展開が続きました。0-0が続き、相手にさらなる勢いが出てきそうだった後半14分、高橋祐治選手の目の覚めるようなロングシュートが突き刺さりました。筑波の小井土監督も「あの場面も、自分たちの守備に隙はなかったと思います。高橋選手のシュートがすばらしかった。あれは偶然ではなく、札幌戦でも決めていますし、個の力の差が出た。集中が途切れたとかではなく、相手を褒めるしかない」と大きく称えられました。守備でも危ない所、ゴール前はやらせない、大きなミスを起こさず、堅く、きっちりと90分を守り抜いて、僅少差ながら、しっかりと勝ちあがることができました。
昨日の日記にも書いたように、この両チームには多くの人の交流があって、いろんな人間模様が今日もありました。9年前の対戦では筑波の一員だった三丸選手。「対戦が決まってからも、試合後の今も特別な気持ちにはなっているが、試合が始まる前はリーグ戦と同じように、どう目の前の相手を倒すかというところに集中していたので、他の試合と変えて入ったつもりはない。ただ、筑波大学の組織的な良い守備であったり、攻守においてアグレッシブな部分を目の当たりにして自分自身思うところがあったし、もっともっとやらなくてはいけないという気持ちにさせてもらった」と感慨深い面持ちでした。
悔しい思いでいっぱいの選手もいることでしょう。両チームからもっとも注目を集めたであろう森海渡選手、大学在学途中でのプロ転向、この日の古巣対戦に先発出場するも前半だけでの交代に終わりました。筑波大学にもレイソルアカデミー出身の選手がいました。14番をつけた田村蒼生選手、165cmと大柄ではありませんが、左サイドからの切れ味鋭いドリブルが光っていました。後半、大南選手との1対1の真っ向勝負からを制し、右足を一閃。ここはユースの先輩、松本健太選手が「筑波の選手は一人かわしたら、思い切り振り抜くイメージがあった。シュートを打ってくると思って準備出来ていました」とこの日一番のビッグプレーで阻みました。
タイムアップのあと、田村選手は「自分たちはレイソルに勝てると思っていたし、勝つことしか考えていなかった。勝てるという自信があったのに、レイソルに負けたことが悔しかったです」と涙をこぼしました。小井土監督も「レイソルで育ててもらった選手。このピッチに立った選手のなかで一番思い入れが強かったのは田村蒼生だと思います」とその思いを汲んだ言葉をおくりました。
田村選手はさらに続けました。「自分のパフォーマンスは出せたが、プロになれるかどうかの違いは内容じゃなくて結果を出せるかどうか。今日はプロの力を見せつけられた試合でした。元々一緒にやっていたユースの仲間、細谷選手、佐々木選手、升掛選手をはじめ、プロの世界で結果を出して、羽ばたいていっている。今は大学とプロの違いがあるけど、自分は追い越すという気持ちで今はやっています。自分もできるというところを大学で結果を残して示したいです」。
いま、レイソルには大学を経て、加入した選手が多くいます。プロになりたい気持ちを諦めず、悔しい思いを力に変えて、成長してきた選手たちです。加藤選手や森選手の背中を見て、田村選手も筑波大学で上をめざして戦ってきたんだという思いが、この日立台のピッチから伝わってきました。サポーターの皆さんにもこの14番が強く印象づいたことでしょう。
続く3回戦は、6月22日水曜、徳島ヴォルティスとの対戦に決まりました。開催地、キックオフ時刻などの詳細は近日発表される予定ですので、またお伝えします。サポーターの皆さんは日曜日に続いての日立台への参戦、ありがとうございました。勝利のSUN本締め、続けていきたいですね!次は18日の神戸戦、チケットの売れ行きが進んでいますので、お早めに購入頂いて、日立台3連勝めざしてお集まりください!