FC東京戦
担当:大重正人
今日の味の素スタジアムのビジタースタンドは、本当に黄色でびっしり埋め尽くされていました。レイソルでのリーグ戦初先発となった中川寛斗選手に向かって、何度も繰り返された「ナカガワ」コール。選手入場の直前のFC東京サポーターの「You'll never walk alone」をかき消すような歌声と手拍子。その声援と思いに応えなければいけない試合でしたが、今日も勝ち点3を届けることができませんでした。
両者シュートまでなかなか行けない膠着した展開だった前半32分、FC東京・武藤選手がレイソルの右サイド裏へ飛び出し、そこからの折り返し。相手のシュートに懸命にスライディングし、足を延ばしましたが最後及ばず失点。後半立ち上がりからレイソルが反撃に出て、敵陣でのボールキープが長くなり始めたところ、CKのチャンスで鈴木選手が倒されてPK。これをレアンドロ選手が落ち着いて決めて1-1。
しかしその直後、レイソルが自陣ペナルティエリアで武藤選手を倒してPK。ここで地震が起こるハプニングで2分以上の中断のなか、GK菅野選手が懸命に反応して手に当てましたが、武藤選手が勝ち越しゴール。太田、大津、キムと3枚のカードを使い、ゴールに迫りますが、相手を破ることができず、タイムアップとなりました。
吉田監督の会見での談話です。
「先手を取られ、追い付いて、また取られ、そういった中で最後の突破するパワーと鋭さを欠いたまま、90分が過ぎていったという試合でした。FC東京のようなチームに先手を与えるということはゲームをコントロールされる確率が高まると、もちろん分かっていました。武藤選手に最初、一発目抜けられたところの対応、そういったことが起こり得ると分かった中でやられるという試合を今シーズン何回も繰り返している。そこを修正し切れていないというところが、こういった結果、ゲームを落としていくところにつながっている。
ただ、選手は走りましたし、戦いましたし、前半も米本君の負傷もあり、相手がメンバー、システムを変えてきた中で、ピッチの中で声を掛け合い修正しながらやっていましたので、そこの結果、そこで点を取られる幼さ、拙さというところを私の方で改善していかなくてはいけない」
最初に書きましたが、今日は中川寛斗選手が、レイソルに復帰して、初めてのリーグ戦先発出場を果たしました。試合後のミックスゾーンでは、レイソル選手のなかで一番多くのメディアに囲まれていました。155cm、57kgの体格で「僕は見ての通り、体は小さいです」。でも、相手との衝突を恐れず、相手の間でボールを受けようとするプレーが、メディアの方々の目に留まったのは間違いありません。
また、マイボールになれば、真っ先に相手の背後をとろうとするフリーランニングがひときわ目立っていました。今季から計測されている選手の走行距離(トラッキングデータ)として数字にも表れ、レイソル選手で断トツの1位をマーク(11.45km、2位は輪湖選手の9.88km、3番目が茨田選手の9.81km)。試合を通して、中川選手を超える走行距離だったのは、FC東京の武藤選手だけでした(11.80km)。走行距離が直接的に勝利につながるものでもありませんが、それでも、何とか自分が相手の裏でボールを受けたり、また相手を引きつけながら味方のスペースを作り出そうとするランニングを、90分最後まで欠かすことはありませんでした。彼のコメントです。
「今季初出場で緊張するかなと思ったが、(普段から)自分が心がけている平常心や動じないところで、いい感じで入れたと思う。自分の良さや求められていることを100%出せれば問題ないと思っていた。そういった意味で仕事はできたと思う。しかし結果が全てなので、そこ(結果が残せなかったこと)が一番問題。チームみんなで話しあって、次につなげていきたい。僕は見ての通り体は小さいし、相手に捕まってばかりでは良さが出せない。いかに相手の嫌なポジションでボールを受けるか。受けたところで流れを変える力は僕にはあると思っているので、今後も続けていければと思う。でも、点にはつながらなかったし、厳しく言えばあれが自分の全てだし現状。もっと突き詰めていかなければいけないと感じている」このピッチでどう自分が生きて、周りを活かすか。90分フル出場にも当然満足することはありません。
これでリーグ戦は、3勝4分5敗。またしても勝ち点を積み上げられず、順位は下位のままです。大谷キャプテンは「いつか勝てるだろう、と思っているなら危ない。全員が今日の試合に全てを出し切るような姿勢がなければならない。イメージの共有が足りない。選手間でもっともっと合わせていかないといけないと思う。サッカーで何より大事なのは結果だから、結果が出るように必要なことをやり続けないとズルズル行ってしまう。いつか勝てるじゃなくて、今日絶対勝つという気持ちで何人が90分間ピッチに立っていたかというところ。負けに慣れるのが怖い。前線で武藤君にあれだけ収められているのだったらガツンと行くのも必要だし、その局面の戦いをそれぞれのポジションでやっていかないと、結局後ろの選手達が負担を背負わなければならなくなってしまう。奪えると思ったところでどれだけ奪い切るかとか、その辺りが足りないと思う」とチームの現状を省みて、非常に厳しい表情でした。
次節は、6月3日。ホーム日立台に浦和レッズを迎えます。現在首位、ここまで13試合無敗を続ける強敵です。「全員が今日の試合に全てを出し切るような姿勢」「今日絶対勝つという気持ち」。大谷選手が言うところの気概をはっきりと見せて、戦わなければなりません。