準備
担当:大重正人
2-0。前半に先制点、後半に追加点、守っても完封。シュートは23本。今日は久々に攻守ががっちり噛み合ったナイスゲームだったのではないでしょうか。
「相手は、我々を研究し、プレーづらいやり方で臨んできている。新しいプランを準備しなければならない」。ネルシーニョ監督がジュビロ戦のあとに会見で話しました。その言葉をあらわすように、今日はメンバー表こそ、いつもの4-4-2でしたが、キックオフ後の前線の並びは変わっていました。レアンドロ選手がトップ下に入り、工藤選手が2列目の右、田中選手の1トップのようなシステムでした。
レアンドロ選手と左のジョルジ選手がポジションを替えながら、後ろからのボールを引き出し、工藤選手は右サイドで持ち前のポストワークで起点になります。もちろん前半は石崎監督らしいプレッシングサッカーで自由を奪われるところもありましたが、酒井選手のものすごい突破力から徐々にゴールに迫ります。「レアンドロが中に入ったことで、自分がドリブルで崩さないといけないと思っていました。工藤がしっかりキープしてくれるし、すごく上がりやすかった」。選手は同じでも、監督のちょっとした配置の妙で、2試合連続無得点だったレイソルの攻撃が、有機的に動き始めました。
そこで生まれた、工藤選手のゴール。相手との駆け引きから前を向くと、そのまま得意のコースからゴールゲット。いつもはGKの右手をかすめるような左隅へのゴールが多かったですが、今日はスバッとニアを打ち抜く強烈弾。「自分でもあまり撃ったことのないようなシュートが決まって、びっくりしました!」この先制点が大きくものを言いました。
後半は相手の勢いが弱まったこともあり、さらにボールが回り、シュートチャンスも増えました。しかしペナルティエリアでの相手DFの奮闘もあり、どうしても追加点を奪えません。「1-0の状況はDFにとっては厳しいから。マスと踏ん張りながら、なんとか決めてほしいという思いだった」という近藤選手。セットプレーのチャンスで、マークマンとの駆け引きに勝ち、きれいなヘディングゴールを決めました。「我慢が続いているところで自分で追加点を取れたから、いつになく喜んじゃいました」とクールな近藤選手らしからぬ、ものすごいガッツポーズで喜びを爆発させました。
そして後半リードの状況から、藤田優人選手がベンチに呼ばれました。「左でいくぞ!」。レイソルに来てから練習でもやったことのない左サイドバック。「でも自分はボランチや両サイドバックができるのが持ち味。それに、いつ起用されてもいいように準備しておくのがチームの約束事ですから。布部さんの居残り練習のおかげでコンディションも良かった」。スコアはわかっているな?と監督から送り出され、得意のしかけよりも、まずは失点しないようなプレーに徹します。ジョルジと同じサイドでプレーする機会もこれまでほとんどなかったと思いますが「紅白戦でちょうどマッチアップして、やられたこともあります。だからジョルジがどういうプレーをするか、どこで受けたいかとか、しっかりイメージできていましたから、違和感なくプレーできました」。
これぞ『準備』です。控え組にいても常にコンディションをキープし、なおかつ味方のプレーの研究も怠らない。慣れないポジションでも役割をしっかり理解し、臨機応変にプレーする。藤田選手はもちろん、工藤選手もそうです。さらに周りの選手もその長所をいかし、自分自身もいかに機能させるか。今日は非常に質の高い試合ができたのではないでしょうか。
もちろん今日の布陣だけが監督の考える「新しいプラン」ではないでしょう。相手の長所を消し、自分たちがいかに優位に立てるかを考えた上での配置です。監督の頭のなかにはその時折での最善のパターンがいくつもあるはずです。来週は、首位のベガルタが相手。この強敵相手に、去年のようなレイソルらしいサッカーが見せられるか。試金石となりそうです。