春の嵐
担当:大重正人
まず、天候悪化の予報が出されるなか、それでも日立台でともに戦ってくださったサポーターのみなさん、本当に本当にありがとうございました。すばらしい3つのゴールが生まれ、数的不利のなか、勝ち点1をつかみとったにもかかわらず、スタンドからブーイングが起こるようなラストになったことは、本当に残念なことです。判定の成否はピッチに立っているプロにしかわからないところが多分にあるとは思いますが、ピッチ上で起こったことへの違和感を、スタンドの目の肥えた観客のみなさんはすぐに感じ取ります。皆さんが心からサッカーを楽しみ、力いっぱい応援に集中できる試合を作り上げてほしいと願います。
でもそんなブーイングは、すぐに大きな拍手と声援に変わりました。前半途中で栗澤選手が2枚目の警告を受けて退いたにもかかわらず、10人となった後半に工藤選手の一時は勝ち越しとなるゴール、身体を痛めるまでに力を出し尽くし、そして死に物狂いでゴールを守り、また反撃に出てゴールへあと一歩まで迫ったレイソルの選手たち。彼らの奮闘もまた、スタンドのひとりひとりの心に伝わっていました。
「ひとり少なくなって、後ろの選手が攻撃に枚数をかけられなくなっていたから、自分が仕掛けて、1人でも2人でもはがしたいと思っていました」。3点目の前、右サイドから増川選手に仕掛けた1対1のシーン、いつもとは少し違う背番号9の背中がありました。そして後半18分、カウンターのパスを受けると、「ひとりで行く」と覚悟を決めたようにドリブルをスタート。前に立ちはだかる、Jリーグ最高峰のDF闘莉王選手。鮮やかなボールタッチで突破すると、PAではカバーにきた増川選手と田口選手の間から左足のシュート。その気持ちのこもったボールは、GK楢崎選手の手を押しのけるように、ゴールネットまで届きました。
強さと高さと経験と。Jリーグでここまでレベルの高い守備陣が揃うチームは、ほとんどないでしょう。その壁を一人で打ち破った工藤選手。技術はもちろんですが、やはり自分が決めるんだという気迫がゴールを生んだのだと思います。「背番号9」の重さを、今は間違いなくパワーに変えています。5試合で5ゴール、6ゴールでトップのマルキーニョス選手、豊田選手に続く3位に躍り出ています。そして圧倒的不利だった試合、ついに途切れるかと心配した「不敗神話」。自らのゴールで継続しています。
栗澤選手に代わって、ボランチに入った茨田選手も持ち味を発揮しました。レイソルがひとり少なく、グランパスも前がかりになったことで、スペースが広がり、的確なボールを配球するパサーとしての力を最大限に発揮できる時間でした。3点目の工藤選手へつけたパスもスタンドから見ている予想とは少し違うコースに見えました。しかしそれは、スムースに工藤選手がドリブルアタックできる最高のパスでした。
そして終了間際のラストチャンス。右サイドで起点となり、キムチャンス選手と突破を図るところ。外側へ出すような身体の向きから、身体をぐっとひねって内側へパス。思わず「そこじゃないでしょ!?」と疑ってしまったパスは、DFの逆を突いて、裏へぬけだしたキム選手へピタリ。クレオ選手へのクロスは惜しくもカットされてしまいましたが、こちらの予想を超える、彼本来のプレーを出してくれたように思います。
続く火曜のACLでは近藤選手が、そして週末のリーグ戦甲府戦は栗澤選手が出られません。ですが代わりに出場する選手が、今日のイレブンのようなパフォーマンスが出せれば、同じようにすばらしい試合ができるはずです。まずは火曜日の水原戦、中2日で決戦への準備を続けていきます。