担当:大重正人
昨日のガンバ戦。それまでリーグ戦では7試合勝利がなく、またホーム日立台では昨シーズン最終戦以来、勝利から遠ざかっていました。悩み、考え、話し合い、トレーニングの中で、何とか懸命にこの状況を打破しようと、戦い続けてきた選手たち。声を枯らし声援を送り続けてくれたサポーター。まだひとつですが、ようやく一つ報われる結果を得られました。
試合前日に「誰かのスーパーゴールが決まるみたいなことも必要かも」と鈴木大輔選手が話していましたが、前半12分のエドゥアルド選手の先制ゴールは「本当は中に切り返そうと思っていたが、ゴール際に入り、結果的にゴールにつながった」という少し幸運にも恵まれたかもしれません。ただ、その前の、ボールの動かし方やキムチャンス選手の仕掛けまでの連携はすばらしく、その良い流れを作り出したからこそ得られたセットプレーからの先制ゴールでした。
吉田監督の会見、まず冒頭のコメントです。「1-0の勝利、リーグ戦ホームで長らく勝てていなかった中での勝利ということで、今夜に限って言えば、すごく良い夜になったと思います。まず宇佐美君が左サイドにいて、若干予想と違う中で攻撃のスタートをどうしようかというところで、立ち上がりに選手たちがさっと判断して、自分たちの立ち位置を変えていくような冷静な入り方をした。こういった状況、今積み重ねている勝ち点、ここ最近のゲームの失い方を考えると、なかなか冷静になるのは簡単ではなかったと思いますが、そこを冷静に入れたというのが最後まで集中力が途切れることなく、アイデアが留まることなく、最後まで行けた大きな要因だと思います」
得点ランク1位タイのFW宇佐美選手、近藤選手がJリーグで一番じゃないかと評したフィジカルの持ち主であるFWパトリック選手。ここに遠藤選手を中心とした中盤からパスが入り、また両サイドバックが高い位置をとる。特に後半は相手の強烈な圧力を受ける時間が続きましたが、前線からのチェイシング、遠藤選手がボールを持つと常に栗澤選手が前に立ちふさがる。パトリック選手に果敢に挑み続けた鈴木選手は顔面を打ちつけ、今日は12ラウンド戦い続けたボクサーのように顔を腫らしていましたが、それでもひるむことなく戦い続けました。エドゥアルド選手もヘッドで決めた1点を、今度は自らのディフェンスで守り抜きました。
吉田監督はエドゥーをこう評しました。
「エドゥアルドは、とても今成長している選手です。彼はまだ若く、ゲームの中で自分をコントロールできなくなる瞬間が多く、この前もありましたが、それが理由でチームがゴールを失うことは1回や2回ではなかった。ただ、とても今安定している。ひとつは中谷がエドゥアルドの代わりに出て、中谷は失点には絡んだものの彼との違いをみせた中で、目覚めるものがあったでしょう。もともとエドゥアルドの身体能力は見ての通り高いので、中盤にボールを放すスピード、見ている場所、あとはこれが一番大事だと思うんですけど、周りの日本人選手の信頼を今だんだん勝ち取りつつある。ただ、安泰ではないですし、これからチームとともに向上を続けなければいけない1人です」
またレイソルが主に4-1-4-1というシステムを敷く中、最終ラインの前方中央に構える「アンカー」というポジション。茨田選手が多くの試合で先発してきましたが、この日は秋野選手が起用されました。
(吉田監督)「秋野の攻撃力、ゲームのオーガナイズしていく力、コントロールしていく力。ガンバをスカウティングし、どこにポイントが作れるかというところで、秋野のところでボールを循環させて、相手の足を止めて、もしくは走らせて。彼はディフェンスラインの背後を見るということをすごく得意にしているので、そのへんが生かせればというのが、秋野を起用した大きな理由です。評価としては、今シーズン途中出場を含めてリーグ4試合目で、立ち上がりにボールを失うシーン、抜かれるシーンもありましたが、いち早く順応して、前にいる大谷と栗澤に物怖じせず、彼らを十分リードして、声をかけて、堂々とやってくれたと思います」
さらにメディアからは、このアンカーというポジション、このサッカーにおける役割を問う質問がありました。
(吉田監督)「90%、アンカーポジションに人を置いて、試合を進めています、その中であそこのポジションがゲームのスピードを決める。相手の攻撃のスピード、我々の攻撃のスピードをコントロールするということで、どういう選手を置こうかといつも考えています。茨田はどちらかというと体が動けるタイプの選手で、間というか、そういったものもできるけれども得意ではない。秋野は茨田のようなモビリティー(機動性)は高くはないんですけど、逆にいうとゲームをコントロールする、スピードやボールの方向をコントロール、することに長けている選手です。
私があのポジションに求めているのは、ゲームをオーガナイズしたりコントロールしたりするところ。2人とも良い面、悪い面ありますけど、その中でどちらを起用するにも躊躇はないですし、あのポジションはひとつのキーになるだろうというところで、ボールをより循環させたい、もっと試合を支配したい、プレーをしたいというところで秋野を起用しました」
また、後半23分には、この日左サイドバックとして奮闘していた藤田選手が負傷するアクシデント。ベンチに控えていたのは、ルーキーの中山雄太選手でした。
(吉田監督)「まず、サイドバックは彼の本職ではないです。彼はセンターバック、ボランチ、トップ下、いわゆる真ん中の選手でやってきました。練習試合、紅白戦で左サイドバックを経験している段階です。ただ、本職じゃない中でも彼の努力があり、トレーニングの中でうちのクリスティアーノと対峙していて、徐々にサイドバックとしての力も付けてきた。僕の見ている目ですけど、若い選手が出る時に大事な周りからの信頼、あいつはやれるというものも私自身が感じ取っていました。あの場面でガンバがおそらく一気にパワーで攻め込んでくることを考えた時にも特に躊躇はなく、起用することはできましたし、逆にこういうタイミングが来てよかったなと思っています」
中山選手も含め、チームが懸命にリードを守り続けていた後半39分。これ以上ない切り札が投入され、日立台はこの日一番の応援に包まれました。背番号3が9か月ぶりの公式戦ピッチへ。「鳥肌が立った。中盤を1枚減らし、後ろを増やした分、ガンバの中盤にボールを持たれる可能性があったので、しっかり跳ね返すことを意識した。全員が集中していたので、流れを壊さない気持ちでピッチに入った」。この投入で選手たちの集中もまたさらに高まったでしょうし、何より「ガンバに絶対に1点もやらない!」というスタジアムの雰囲気、後押し、一体感が、苦しかったあの時間帯にレイソルの大きな力となりました。
吉田監督は、このサポーターの力に大きな感謝を述べました。「今日は雨で、平日にもかかわらず、しかも我々がこんな成績にもかかわらず、もちろん柏熱地帯には大きな声援があって、たくさんのサポーターが来ていただいて、このチームに大きな力を与えてくれたのを、今日はウォーミングアップの時からしみじみ感じていました。できることなら勝ちたいといつも思っていますが、それが最後の最後まで力を与えてくれたということは間違いないと思います。いずれにしても我々はこれで喜んでいられる状況ではないというのは全員が分かっていますし、今日の試合からも改善、修正するポイントはありますが、それを改善、修正して、さらにここから上がっていけるように、努力をしなければいけない」。
これまでの試合、そしてこの一勝を無駄にせず、来る土曜の甲府戦、そして2ndステージへつなげていかなければなりません。この一勝でサポーター皆様のお気持ちがすべて晴れわたるわけでは当然ありませんが、今後ともレイソルへのご声援をよろしくお願いいたします。