豊田で
担当:大重正人
豊田スタジアムでの試合は、2011年以来。あのクラブワールドカップ準決勝、サントス戦以来のゲームでした。すり鉢のように深く掘り下げられたピッチと、急こう配のスタンド。冬の始まりだった時期も同じころで、今日も後半から冷たい空気が記者席に入り込んでくると、あの時の凍えそうな身体の冷えと、反面に心は熱く燃えたぎったことを思い出しました。
今日のグランパス戦も、サントス戦と同じように、互いが攻撃的な姿勢で攻め合い、非常にチャンスの多い、エキサイティングな試合になりました。レイソルは太田選手、工藤選手がゴールを決め2点を奪いましたが、最後に突き放されての惜敗。特に前半は絶好機が多く、「自分はもちろん、前線のフィニッシュの精度が高ければ勝てていた」と工藤選手は悔恨を口にしました。比べようもありませんが、当時のサントスのボルジェスやネイマールのような決定力が両チームにあれば、また違う展開になったかもしれません。
今日はまた新しいレイソルの課題が浮き彫りになりました。新しい3バックのシステムにチャレンジし、時には5人が最終ラインに戻る態勢で、守備は間違いなく安定しました。その分、攻撃や得点力がパワーダウンすることもありました。ただ今日は「ボール回しはこれまでで一番良かった(増嶋選手)」、「この前の試合よりもさらに高まっている(ネルシーニョ監督)」という言葉通りの、カウンターとポゼッションを織り交ぜた攻撃は非常に見応えがありました。
一方守備では、何度もグランパスの鋭いカウンターにさらされました。レイソルの攻撃時には右の太田選手と左の橋本選手が最前線に上がり、5トップのような形になります。4バックの相手に対して、このシステムの優位性が最も現れる場面です。ただその分、中盤を一人でカバーすることも増えます。今日は栗澤選手が勝負の縦パスを入れたときに、それがカットされるとたちまちカウンターのピンチにさらされる場面が特に前半目立ちました。「自分とワタルくんが前に張った時、相手のサイドハーフに攻め残られるとカウンターになってしまう(太田選手)」「カウンターになったとき、誰がどのポジションに戻るのか。そこを整理しないといけない(大谷選手)」
ただ今日は、とても攻撃的にいけたからこそ見えてきた、このシステムでの守備の課題。ただそれはこのシステムを突き詰めていくためには、大きな収穫でもあります。「新しいことにチャレンジする難しさはあるけど、自分たちはプロとして、お金を払って遠くまで見に来てくれるサポーターの人達のためにも、結果も出さないといけない」。大谷キャプテンの言葉をここでしっかり伝えたいと思います。より強く、勝てるチームになるために、あと2試合を見守っていただければと思います。
最後に、今日ゴールを決めた工藤選手。リーグ戦での18ゴール目は、レイソル史上の日本人選手最高記録タイです。これまでのレコードホルダーは北嶋秀朗選手、2000年に同じく18点をマークして以来のタイ記録となりました。「気にしすぎると力が入ってしまうんですが、尊敬するキタジさんの記録はやっぱり意識していました。今日並べたことで、更新するチャンスを狙っていきたい。とはいえ、キタジさんを越えるようなところはまだひとつもないし、こういう記録を始め、少しでも近づけるように頑張りたい」。明日、神戸で現役最後の試合に挑むキタジへの熱いエールにもなったことでしょう。背番号9でつながった2人のストライカー、戦う舞台は違っても、「最後のアベックゴール」を期待しています!