2009年12月 3日

桐畑選手 母校に錦を飾る

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担当:河原 正明

遅い時間の更新になりました。

体育館に響く歌声。私はかつて「歌」にここまで感動したことはありませんでした。

今日の午後、橋本選手・桐畑選手といっしょに今シーズン最後の「レイソルしま専科」で柏市立中原小学校を訪問しました。
桐畑選手にとっては久しぶりに訪れる母校になります。玄関に向う途中で校庭を横切ると「子供の頃は校庭が大きく感じたのになぁ?」と興奮気味に話し出します。いつも高めの桐畑選手のテンションがさらにあがったのは校長室で歴代の卒業アルバムを発見した時。「いたーー!」と橋本選手に見せたのはユースでも2期先輩の石川直樹選手(現 札幌)の卒業写真。しっかりと面影が残っていてみんなで思わず「変わっていないね!」と大爆笑していました(イシごめん!)。
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本日は小学5年生を対象としたキャリア教育の一環として両選手からの話を聞く授業です。トップバッターは橋本選手。教員免許を持つ彼、関西弁に加えてソフトに語りかける口調に、児童たちも自然と話しに引き付けられています。
なかでも青森山田高校時代のエピソードにはみな興味津々。「みんな雪の中でサッカーする時どうするか知っていますか?」橋本選手はおもむろにシューズを脱ぎだします。「靴下の中に、ビニール袋を履きまーす」「ワァー!」列後方の児童たちが思わず立ち上がります。
「次にまたもう1枚ビニール袋を履きまーす」「スゴイ!」子供たちはまたまたビックリ!「そして最後に靴下をもう1枚履いて、これで雪の中でも大丈夫!」さすがのレイソル唯一の関西芸人風選手(?)、ネタの仕込みはバッチリでした。

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高校時代に恩師から教わった「失敗を人のせいにしない」こと、それから3年間共に過ごした仲間との友情はいまでもかけがいの無い財産だそう。「みんなもこれから嬉しいことや悲しいこと、楽しいことや辛いことが待っている。でも周りを見渡してください。仲間がいるよね!友達を大事にしてね」と、メッセージを贈っていました。

続いては桐畑選手。開口一番に「僕はみんなと同じ中原小学校を卒業したんです」と話すと、事前に知らされていなかった児童たちから一斉に「エーーーッ?」という驚きの声と大きな歓声が上がります。つかみはOK、この後は見事なまでの「ザ・桐畑ワールド」となったのでした。

桐畑選手が選ばれ参加した2006年AFCユース選手権大会。21人の選手がインドに乗り込みましたが、大会には20人しか登録できません。一人が必ず落ちる・・・誰もが自分がその一人になるとは考えていません。しかし大会前日、桐畑選手は監督に呼ばれ、自分がメンバーから外れたことを告げられます。「ショックだった」5歳からサッカーを始めてからずっとレギュラーだった自分。でも「そこで自分が日本代表に何ができるか」を考えた。行動した。用具やドリンクの準備、GKとしてシュート練習を受ける・・・みんなが嫌がることも進んで引き受けた。
「悲しかった」。異国の地、インドで一人スタンドに立ち君が代を歌う。「心苦しかった」。それでもやり続けた。決勝戦、勝利後にピッチで弾ける輪に飛び込んでいった時は嬉しかった。でもそれ以上に嬉しかったのは「本大会に行けたのは試合に出られなくても、ずっとチームを盛り上げてくれたお前がいたからだよ。」と監督に言われた時。そして、「ありがとう」の言葉とともにチームメイトから貰った全員のサイン入り代表ジャージは一生の宝物。

「今までの自分は楽しいこと、楽な方にばかり行って、苦しいことからは笑ってごまかして逃げていた。今も試合に出られないけど、このインドでの経験があるからいつも『今、自分にできること』を考えるようになった。みんなも目の前のことから逃げずに立ち向かってほしい」と熱いメッセージを後輩に贈りました。

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「あと5分いいですか?最後に卒業アルバムを読みます」とおもむろに卒業文集を取り出した桐畑選手。「僕が10年前に書いた作文です」。またまた驚きの声と共にみんなの視線が桐畑選手に集まります。
「僕はいま、イタリアのミラノにいる。僕はACミランに入団して、デルピエロやバティストゥータと闘っている・・・」という書き出しで始まったのは未来の自分を想像して当時12歳の桐畑少年が書いた「夢」。
すごい、の一言です。いまはまだ「夢の日本代表」ではないし、もうバティも引退したけれど、あの頃の「夢」を叶えた桐畑選手には言い尽くせない程の数の後輩たちからの尊敬の念が集まっていました。

児童代表の挨拶が終わると、またキリが口を開きます。「僕たちも一生懸命話したので、みんなからもプレゼントが欲しい」。
えっっ?またまた予想外の発言で驚く私。「歌がいいな!」おいおい勝手に決めるなよ・・・ふと目を先生に見やると「じゃあピアノと指揮台用意して!」とあっさりOKが。歌も桐畑選手のリクエストで「じゃあ合唱コンクールで歌った『星の大地』」に。
指揮を務める子が手を高く構えます。そしてピアノの伴奏とともに聴こえた第一声。音の壁がドン!と押し寄せてきます。そしてその歌声の美しさに圧倒されます。聴いているうちに自然と目頭が熱くなりました。同行した宮本主務もウルッときてました。自分の文章力の無さが悔やまれますが、体育館全体が楽器のようにいつまでもいつまでも響いていました。

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帰りがけに校長先生は「いやー、今日の子供たちはのっていました!いつも以上です。」と驚いていましたが、橋本選手も「あの歌声には、マジ感動しました。(大宮戦後は)いろいろ落ち込んでいたけど、今日は本当に元気と勇気を貰いました!川崎戦もやりますよ!あ、俺も母校に行きたいです!」と興奮気味に話すように選手たちが得たものの方が大きかったようです。
桐畑選手は「こうして母校に来れることは本当に幸せです。歌はどうしても聞きたかったので、歌ってくれたのは嬉しかった!今日は力をもらいました。また来年も来たいです!」と笑顔で話してくれました。二人ともしっかりとパワーをいただき、そして与えられる。桐畑選手の誇らしげな顔を見て、私にとっても今日は改めてプロサッカー選手は本当に素敵な、うらやましい職業だと感じると同時に、クラブとして改めてこうした活動を続ける意義を再確認できた大事な日になりました。

プロ選手として、やらなければいけないこと。それは残された試合を全力で戦うこと。今年最後のMDPが土曜日の川崎戦に発行されます。最後まで闘う勇者たちに励ましのメッセージを、いつものように「サポーターズボイス」宛にお送りいただけますように。締め切りは明日14時までです。必ずハンドルネームを添えてお送りください。お待ちしております。

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